マチダの生活

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 わたしの大好きな作家であるアーネスト・ヘミングウェイの遺作「移動祝祭日」は、彼の輝かしいパリ生活を綴ったメモワールだ。時は1920年代。当時まだ20代前半の駆け出し作家であった彼の、カフェにこもって執筆に没頭する日々や、芸術界を牽引するクリエイターたちと交流を重ねる様子などが瑞々しい筆致で描かれている。

 そして何より印象深いのは最初の妻ハドリーとの生活だろう。

 結局は彼の浮気が元で離婚してしまうわけだが、晩年にその時代を振り返って書かれた本著には非常に愛情深く、また敬意を持ってその人物像が描かれている。もう戻らない彼女との生活を慈しむ様は、まるで宝箱の蓋を開けて眺める少年のようで、なんだか胸が詰まるような思いで読み終えた。同氏にとってあの頃のパリとはつまり、ハドリーそのものだったのではなかろうか。

 先日読み終えた夢野久作のドグラ・マグラ。ちょうど本カテゴリ一発目の記事を書いたタイミングで読み始めていたから、およそ2週間ちょっとかかったということだね。わたしの遅読ぶりがこれでおわかりいただけることだろう。

参考ページ本はわたしを映す鏡だ

 相当練り込まれたであろうプロットが緻密かつ重層的に織り込まれたサスペンスで、率直に面白かった。中でも一層わたしの興味を惹きつけたのは使用されている文体の豊富さである。

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